特 集


2016年新春座談会
テーマ「北海道新幹線開業による青函経済圏の未来」

青函新時代の幕開け! 津軽海峡ブランドを全国へ発信


(左から)

司会:田中正子、倉橋青森商工会議所副会頭、久保函館商工会議所副会頭、
   中野函館商工会議所青函圏委員長、後藤青森商工会議所青函圏交流委員長


 2016年が明けた。今年のハイライトはなんと言っても北海道新幹線(新青森−新函館北斗)の開業。青函トンネルの中を新幹線が走る。かつて約4時間以上を要した青森と函館が新幹線で約1時間で結ばれ、青函圏域はこれまで以上の強いきずなで結ばれる。青函新時代の幕開けだ。恒例の新春座談会では「北海道新幹線開業による青函経済圏の未来」をテーマに、青森商工会議所副会頭・倉橋純造氏、同青函圏交流委員長・後藤薫氏、函館商工会議所副会頭・久保俊幸氏、同青函圏委員長・中野恒氏の4人に大いに語ってもらった。司会は田中正子さんが務めた。

〔田中〕新年明けましておめでとうございます。さて、いよいよ北海道新幹線が3月26日に開業します。北海道新幹線開業は八戸、新青森に次ぐ「第三の開業」と位置付ける本県にとって、交流人口の拡大と消費拡大による地域経済活性化への期待が高まっています。そこで、本日は青函両商工会議所のキーマンに集まってもらい、「北海道新幹線開業による青函経済圏の未来」について語っていただきます。まず口火を切って、青森商工会議所の倉橋副会頭からご発言を。

青函経済圏の形成に期待

〔倉橋〕明けましておめでとうございます。日ごろより青森商工会議所の活動にご理解、ご支援いただきありがとうございます。青森商工会議所では北海道新幹線開業を見据え、6年ほど前から青函圏交流委員会の活動が本格化し、来るべく青函経済圏の形成に向け準備を進めてきました。開業まで100日を切り、秒読み段階に入ってきました。なんとか「北海道新幹線開業効果を活かしたい」−との県経済界の思いは強く、商工会議所の取り組みも待ったなしの状況だと強く認識しています。商工会議所の本分であります地域経済の活性化に向け出来ることは何か、そのために何が必要かということをきちっと見定めてまいりたい。

〔久保〕函館商工会議所副会頭、道南縄文文化推進協議会会長、そして、NPO函館市体育協会会長を務めさせていただいています。今年はなんと言っても、北海道新幹線開業が一番大きな出来事です。函館経済界の期待感は大きく、これまで開業に向け準備を進めてきました。開業を契機に多くの観光客を青函圏にお迎えしたい。また、縄文文化で言うと、青森、秋田、岩手県と手を携え縄文遺跡群の世界遺産登録を目指して活動しています。1日も早く世界遺産登録をして、海外からも国宝のある函館、そして縄文文化豊かな青森に多くの観光客を呼び込みたい。青函両地域はスポーツの分野でも青函対抗競技を開催するなど50年以上交流を続けてきました。北海道新幹線の開業は経済、文化、スポーツとあらゆる分野での青函交流活発化を促進させます。これまで以上に青函連携の取り組みを強化していきたいと考えています。

通過駅にならない工夫を

倉橋青森商工会議所副会頭
久保函館商工会議所副会頭

〔田中〕東北新幹線全線開業から5年が経過、新幹線がようやく青函トンネルを通って函館まで延伸します。改めて新幹線に寄せる思いを聞かせてください。
〔久保〕北海道民、函館市民にとって函館までの延伸はわくわく、そして、やっと、ようやくと言うのが偽らざる感想かなと思います。最初に新幹線が開通してから50年以上を経て、ようやく北海道函館の地にたどり着きました。新幹線誘致に尽力された多くの先人の方々に敬意を表したい思いでいっぱいです。中国のことわざに「井戸を掘った人井戸を使う人」というのがありますが、先人、先輩たちが刻んだ多くの労苦を忘れてはいけません。昨年暮れにJR北海道がダイヤを発表しましたが、最速列車の所要時間は新函館北斗−東京間が4時間2分、新青森−新函館北斗間1時間1分となり、4時間、1時間を切れなかったのは残念でした。もう少し時間が短縮され、スピード感がアピール出来ればもっと良かった。本数についても1時間に一本の間隔で運行してもらえればベストだったかなと思います。料金設定にしても、気軽に新幹線を使ってもらえるにはやや割高感があるかなという感じ。新幹線を敬遠して他の交通手段に頼るようにならないよう、JRに対し早割とかパック料金とか利用しやすい料金設定をお願いしたい。
〔倉橋〕先々月、視察で長野県に行ってきました。北陸新幹線が金沢にまで延伸になり、長野の商工会議所関係者の皆さんは非常に危機感を持ち、5年前から対策準備を重ねていたようです。例えば、長野新幹線の名称をそのまま残してほしいとか、観光地として魅力ある街の実現目指していろんなプロジェクトを立ち上げています。北海道新幹線の開業で新青森駅も始発・終着駅の役割を終えるわけですが、単なる通過駅で終わらないようにしなければいけません。新青森駅開業直後に襲った東日本大震災の影響で、開業効果を享受できなかった面もあり、今度こそ新幹線効果を引き寄せたい−との思いは人一倍強いものがあります。ただ、開業への期待感ばかりが先行して、さまざまなキャンペーンが一過性の祭りで終わってしまってはどうしようもない。あとの祭りにならないように持続可能な連携をきちっと取っていく必要があります。その意味で新幹線開業は終わりではなく、始まりだということです。

接客・接遇の充実を急げ

〔田中〕インバウンド対策についてはどのような戦略を。
〔久保〕東南アジアを含めて最近は冬の北海道、雪の北海道を見たいと言う観光客が沢山いるようです。こうした観光客の要望にこたえ、函館を起点に南は仙台、北は札幌までを巡る周遊観光商品の造成を急ぎたい。函館から青森を経由して仙台へ、仙台から青森、函館を通って札幌へと言うようにいろんな観光ルートが考えられる。タイ、シンガポールからの誘客も見込める。外国人が溶け込める街づくりをはじめ、接客・接遇などホスピタリティの充実も急務でしょう。
〔田中〕新幹線開業をにらんだ青函両商工会議所の取り組みとして、青森、函館の相互で開催している「会員事業所パートナーシップ構築懇談会」があります。その狙いは。

青函会議所の知恵を結集

中野函館商工会議所青函圏委員長
後藤青森商工会議所青函圏交流委員長

〔後藤〕ジョン・F・ケネディの有名な言葉で「バラバラであればできることは殆どない。繋がればできないことは殆どない」−と言うのがあります。青森と函館は連絡船で4時間、青函トンネルが開通して2時間となり、そして今度の新幹線開業で所要時間が約1時間になる。時間短縮は青函圏域のつながりをさらに強める契機となり、従来から交流が盛んだった教育、文化、スポーツほか、経済などさまざまな分野でのより一層の交流促進が期待されます。青函の経済的なつながりをより強固なものにしようということで始まったのが「パートナーシップ構築懇談会」です。平成25年3月に第1回の懇談会を開催し、昨年10月の開催で5回目を数えています。青函両商工会議所合わせて約5,500の事業所があります。個々の事業所が持つノウハウを活用し連携することで、新たな販路開拓、商品開発、技術提携につなげようという試みです。
〔田中〕回を重ねるごとに成果も上がってきていると聞いています。具体的にどんな効果が生まれていますか。

「青函コラボ商品」が誕生


会員事業所パートナーシップ構築懇談会
事業提案説明会の様子

〔中野〕懇談会は、ビジネスパートナーを求める事業所の事業提案を毎回8社から10社程度で行っています。その後、事業提案した事業所と提案に関心を示した他の事業所が個別面談会を行うという2本立てで進行しています。函館開催の時は青森側が事業提案、青森開催では函館側の事業提案ということで、相互交流するスタイルを取っています。これまでの開催で事業提案は延べ50社、参加者330人。土産品、お菓子など現在16件の「青函コラボ商品」が誕生しています。
〔田中〕事業の今後の展開についてはどんなことを。
〔中野〕今後、こうして生まれた青函コラボ商品を例えば「BLUE BOX」という青函圏の統一ブランド名を付け、首都圏などに発信し売り込んでいきたい。東京ドームで行われている「ふるさと祭り東京」のようなビッグイベント等にも積極的に出展しPRしたい。パートナーシップ構築懇談会に関しては、会議所の会員事業所以外の業者の参加も募り、これまで参加できなかった業態の分野にまで幅広く広げる必要を感じています。函館の1次産業従事者などの参加があってもいい。異業種の結び付きによる今までにない連携の可能性が生まれるかも。期待大ですね。


事業提案に関心を示した事業所と個別面談を行う

〔後藤〕青函圏は概して、100万人から140万人くらいの経済圏と言われています。札幌経済圏が約190万人、仙台が約100万人です。函館から見ると、札幌まではまだ3時間半から4時間かかる。仙台へは2時間半、東京までは約4時間で行けるようになる。函館を中心に考えると札幌より仙台の方が近い。ある分析によると、消費者一人当たりの卸売の売上というのが札幌よりも仙台の方が多い。また、小売りの一人当たりも札幌より仙台が上だと。そうすると函館は青森、盛岡、仙台など東北経済圏との繋がりが強くなる。青森側からすると北海道新幹線開業は歓迎する一方、青森が通過駅にならないかという心配がある。通過駅にならないようにするには経済の活路を広域経済圏に求めるしかなく、本県と道南が一つの圏域をつくり、その圏域をさらに連携を進めることで東北全域にまで広げる工夫がほしいところ。青函圏域が他の圏域に比べて誇れるのが「青函・津軽海峡ブランド」です。同ブランドを売り出すための環境整備に知恵を出したい。

広域圏域構築で活路開け


津軽海峡ブランド博

新函館北斗駅舎

〔田中〕皆さんのご発言の中で先ほどから出てきました「青函経済圏」ですが、同経済圏のあるべき姿についてはどうお考えですか。
〔久保〕函館側で言うと函館市、そして新駅のある北斗市、大沼のある七飯町、木古内駅のある木古内町が一つの函館経済圏として存在します。函館もあと、15年経つと人口が6万人減ると言う予測があって、町村合併も視野に入れないと生き残れないという現実がある。都市規模として人口15、6万人は維持していきたいが、単発では難しい。となれば、必然的に議論として出てくるのが周辺町村を含めて一つの広域経済圏を形成しようという動きです。函館商工会議所もそうした考えに立ち、さまざまな取り組みを行ってきています。先に紹介した縄文協議会も函館を含む広域市町村を巻き込んだ動きを展開しています。昭和2年に函館の商工会議所職員と市議会議員がニコニコ倶楽部という本をつくっていて、50年後の函館の姿を書いています。そこには、当時まだ完成していない青函トンネルが描かれています。当時函館は、函館どつくのある弁天町地区、末広町地区が市の中心だったわけですけれども、函館の中心は五稜郭に移るとも書いています。先見のある意見が書かれており、驚かされます。そういう意味では、今を生きる私たちも目先のことではなく100年後の青写真を描き、次代に継承していく役割が求められているのかも。北海道新幹線の開業は、「青函経済圏」構想を描く契機としたい。そして、それを次世代に渡していかなければなりません。次世代に引き継がれてこそ、本当の意味で血が通った青函圏が誕生すると思います。そのためには、われわれ経済人が単に夢を語るだけではなく、現実可能な構想をしっかりと持ち、現実のものとなるよう行政、国などに働き掛けていきたい。青森市民の皆さまにも同じ思いを共有してもらい、実りある経済圏域形成に向け互いに手を取り、協力しながら歩んでいければと思います。

津軽海峡活かした戦略を


北海道新幹線H5系

青森港へ寄港したダイヤモンドプリンセス号

〔倉橋〕高速交通網の整備で最も期待が寄せられるのが観光の振興です。ですが、われわれ経済人が真っ先に取り組むべきはビジネスチャンスを起爆剤とした地域経済活性化策です。青森商工会議所がパートナーシップ事業に力を注いだのもその点です。企業が新幹線をどう有効活用して、どういう経済活動ができるのか。新幹線でより緊密につながる青函両地域に眠っている宝物を掘り起こし、全国に発信できないか等々、ビジネスに直結したアイデアをなんとか形あるものにしたい−ということでパートナーシップ事業を進めてきました。ある資料によると、21年度は金融機関を除いて、青森圏から函館圏に進出した企業が29社、函館から青森へ進出した企業は27社あるそうです。北海道新幹線の開業で、多分この数が倍増するのかなと期待しています。青森と函館がツインシティ締結してから四半世紀。青森と函館は違う個性を持っており、言わば二卵性双生児。これを上手にコラボできれば1+1は2ではなく3にでも4にでもなる無限大の可能性を秘めています。そしてもう一つ、両地域で共有しているのが津軽海峡です。国際航路と言いますか非常に多くの船舶が通過しているこの海を活用しない手はない。両地域は立派な港を持っており、この港を世界に向けた一大物流基地にしたい。そうなるにはこれから先20年、30年かかるかも知れませんが、津軽海峡という航路を共有して開発も夢ではありません。新幹線の開業を青函圏域が大きく飛躍する起爆剤としたい。しっかり知恵を出すなど、われわれの技量にかかっていると思います。


青森—杭州線 エアバスA320

浴衣着用とお茶を楽しむ外国人観光客
=ダイヤモンドプリンセス寄港時

〔田中〕今年は中国・杭州からの国際定期便も運航される予定となっております。鉄路・空路ともにインフラが整備され、観光面で大きな飛躍が期待されます。
〔久保〕杭州便に関しては、函館は既に、北京首都航空とは別会社の便が運航しています。杭州、上海の人たちは非常に裕福な人が多く、平均所得も高い。観光客としては魅力です。私も観光客誘致ミッションに参加させてもらい中国はもちろん台湾、タイにも行ってきました。インバウンド人口は昨年2千万人に届くぐらいの数字で推移していますし、今後、東京オリンピックに向けてさらに増え3千万人を目指すとしています。また、格安航空会社の存在は航空業界に再編を起こすほど影響は大きく、航空自由化協定により沢山の航空会社が日本に参入してくるなど羽田、成田、関空もどこも満杯状態。そこで注目されるのが地方空港。例えば静岡空港は最初、懸念されましたが今はもう凄い状態になっているとか。静岡空港から学ぶものがあるかもしれません。今回の北京首都航空による杭州−函館線の新規就航は函館市にとっても明るいニュース、チャンスを生かしたい。中国人観光客が青森から入って函館から帰国、また、その逆のルートも可能となります。青函圏のインバウンド拡大をにらみ、新幹線と空港をセットにした旅行商品を売り出したい。

魅力の青森観光楽しんで


三内丸山遺跡を見学する外国人観光客

〔倉橋〕函館に降り立った中国、台湾の観光客は大半が大沼を通って札幌を目指します。それを今度は新幹線を使って南下してもらうと青森はもうすぐそこです。世界2番目に長い青函トンネルも体感できます。青森県は津軽、県南、下北などいろんな文化圏が存在、三内丸山遺跡はじめ弘前の桜など見所は多い。雪を見たことのない外国人観光客にとって「雪」は売りになる。「田舎の非日常的な体感をしたい」「寒さを体感したい」といったさまざまなニーズにこたえる観光素材はそろっている。ぜひ、青森の「自然」「食」「文化」等々を満喫してください。
〔田中〕本日は貴重なご意見、ご提言ありがとうございました。青函圏には世界に誇れる魅力がいっぱいあります。しっかり準備をし、おもてなしの心で観光客を迎えたいものです。今年が本県にとって飛躍の一年になりますように。

  

【出 席 者】

 倉橋純造・青森商工会議所副会頭
 後藤 薫・同 青函圏交流委員長
 久保俊幸・函館商工会議所副会頭
 中野 恒・同 青函圏委員長
 司会 田中正子

(敬称略)


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