特集


青森・杭州線が来年1月就航

北京首都航空 国際線21年ぶり

青森—杭州線の使用機材エアバスA320(県提供)

 青森空港に21年ぶりに新たな国際線が開設される。県は11月19日、中国の航空会社・北京首都航空(本社北京市)が来年1月下旬から、青森空港と杭州空港(中国・杭州市)を結ぶ国際定期便を週1往復木曜日に運航すると発表した。同航空会社は青森と同時に杭州−函館線も新規就航させることから、県は来年3月に開業となる北海道新幹線と合わせ、青函圏での中国人観光客取り込みに全力を注ぐ。青森商工会議所はじめ経済界も購買意欲の高い中国人旅行客の増加による経済効果を取り込もうと、受け入れ態勢の整備を急ぐことにしている。

毎週木曜、週1往復

 県は本年度、日本への渡航が大幅に増えている中国人観光客を取り込もうと、中国の主要航空会社に対し、路線開設を働き掛けてきた。北京首都航空は当初、北海道内の路線新設を模索したが発着枠の制限があることから、北海道新幹線開業で函館への利便性が増す青森空港への路線新設を決定した。
 新規就航を発表した三村申吾知事は「中国との直行便の開設は待ちに待った朗報。来年3月開業の新幹線でつながる津軽海峡交流圏の形成にも大きく寄与する」と期待感を表明。さらに鹿内博青森市長は「交流人口の拡大、新たなビジネスの創出に期待する」、県商工会議所連合会の若井敬一郎会長は「道南地域と連携を図り、観光商品造成など積極的に取り組む」と、それぞれ歓迎のコメントを出した。
 翌20日、県庁にあいさつに訪れた北京首都航空の張立偉日本支社代表は「北海道新幹線開業のタイミングで青森路線の就航を決断した」と語った。懇談した青山祐治副知事は「中国の皆さんに青森観光を楽しんでもらえるよう準備します」と応じた。
 首都航空によると、機体にはエアバスA320(174席)を使用、所要時間は片道約4時間を見込んでいる。12月中に国土交通省に申請手続きを終え、初便は来年1月21日か28日が有力視されている。
 中国の航空会社が定期路線を開設するのは東北では仙台空港に次いで2番目。青森空港発着の国際線の新規開設は1995年のソウル線、ロシア・ハバロフスク線(現在は休止)以来21年ぶりとなる。
 県によると、今年(1月〜8月)、県内に宿泊した外国人旅行者は約6万2千人と昨年同期比1.5倍に増え、中でも中国人は2.2倍に増えている。円安やビザ発給条件の緩和などを背景に日本への渡航が増えている。こうした中国人宿泊客の増加が、青森を就航先として判断した要因と見られる。
 杭州市は、上海の南西部に位置する浙江省の省都で人口約889万人。上海まで高速鉄道で約45分の距離にあり、世界遺産の西湖十景はじめ名所旧跡が多く、風光明媚な観光都市として知られる。


新規就航を発表する三村知事

北京首都航空本社ビル


中国人観光客の“爆買い”に期待

知名度高め継続・恒常的な誘客対策を

 県や経済界が最も期待するのが、「爆買い」と呼ばれる中国人観光客による消費行動だ。観光庁調査によると、中国人客の旅行消費額は訪日外国人旅行消費額全体の約3割を占めるほど高いと言う。こうしたデータから試算し、県は今回の就航による中国人観光客増加の経済波及効果を直接、間接含め年間8億〜16億円と見込んでいる。
 青森市内の小売店でも購買意欲が旺盛な中国人観光客への取り込みを強化しようという動きが活発化している。中心市街地の百貨店では今年3月から免税カウンターを設け、中国語を翻訳できるタブレット端末を置くなどして受け入れ態勢の準備を整えている。このデパートで取り扱う免税品は化粧品、医療品などを中心に売り上げが増加していると言う。郊外型大型店に押され、客足が減少している新町など青森市中心商店街でも中国人観光客が定期的に訪れることになる中国定期便を歓迎しており、各店それぞれ知恵を絞り、営業時間の延長など新たな対応を検討している。
 外国人観光客のショッピングへの対応については、青森商工会議所も「免税店開設支援事業」を実施、セミナーの開催など免税店申請の手続きを後押しし、商工業者の消費拡大策を支援している。
 今後は、青森市等と連携し中国を中心に全世界の50%以上の発行枚数シェアを占める銀聯カードについてのセミナーや免税店紹介事業を実施する予定だ。
 11月21日、中国旅行会社の社員が来県、県内の商業・観光施設を視察、本県側担当者と商談した。中国国際線の開設を受け中国の旅行会社に本県観光の魅力をPRしようと、県が招へいした。一行は青森市古川にある青森魚菜センターで観光客の間で人気の「のっけ丼」を体験するなど中国人が喜ぶ本県観光商品造成に向け情報収集していた。一行は「中国では青森の知名度は低い。中国の人に青森の魅力を伝える」と話していた。
 期待感が膨らむ一方、不安もある。初フライトは1月21日か28日になる模様だが、中国からの観光客を迎え入れる準備期間が2カ月と短いのが気掛かり−といった関係者の声も漏れる。11月26日に開催された「相談役・常議員会」でも、本県初の中国定期便を喜ぶ半面、「同国際便に関する情報が少ない点が懸案材料だ」との意見が出され、若井会頭は「県に対し、積極的な情報開示を求めていく」と話した。
 観光・宿泊施設の充実、街なかでの案内板設置など整備するべきことは多い。中国人観光客のニーズを把握し、万全の態勢で迎え入れる。本県関係者の一体となった取り組みが求められ、本県の知名度アップを含む継続的・恒常的な誘客対策が欠かせない。


「のっけ丼」を楽しむ中国関係者

西湖最大の島小瀛州
Photo by (c)Tomo.Yun 
URL(http://www.yunphoto.net

【日本貿易振興機構(JETRO)「杭州スタイル」より】

「新幹線とセット」で売り出せ

外国人に人気の高い北海道と連携

 県は来春開業の北海道新幹線と合わせ、青函圏での中国人観光客の取り込みに力を入れる。就航発表の記者会見で三村知事は「新幹線とセットでPR出来る大きなチャンス」と強調、北海道新幹線開業に合わせる形で就航が決まったことに手放しで喜んだ。
 函館は台湾や中国からの観光客の人気が高く、外国人の宿泊者数は去年1年間でも青森県全体の約5倍に当たる約34万人に上っている。これら函館を訪れる台湾・中国人観光客をどう本県に誘客出来るか、が課題。県は「新幹線を活用し、外国人に人気の高い北海道と連携することで本県を売り出す」戦略を描く。
 県はじめ市、商工関係者らで構成するミッション団も韓国、台湾などを何度も訪れては北海道新幹線をPR、「新幹線を利用すれば、青森と函館間は約1時間で行き来できる。定期便のある函館からのツアーに青森観光を組み込んで」と、利便性がアップする点を重点的にプロモーションしてきている。
 中国便の就航は、青森、函館のどちらかの空港を利用して入国、その後、新幹線で移動し移動先の空港から帰国するといった空路と陸路を組み合わせた「立体観光」推進の起爆剤となる。三村知事は杭州線就航を足掛かりに今後、中国の他の航空会社への就航促進も強める、としている。
 野村総合研究所調査によると、日本を訪れた中国人旅行者の約8割が再び来日したいと言い、その際は首都圏より地方都市へ強い関心を見せていると言う。一方で、地方観光は移動する際のアクセス面での弱点を指摘する向きもあり、こうした中国人旅行者の心配を解消するためには二次交通の充実、無線LANなどインターネット環境の整備が急がれる。
 新幹線を利用してもらうには、利用しやすい料金設定は欠かせない。青森、函館両商工会議所は10月、北海道新幹線の料金が「割高な設定」だとして、島田修JR北海道代表取締役社長に対し、観光、ビジネスに利用しやすい割引切符の販売などを要望した。
 これに対し、JR北海道は「割引切符については、観光はもとよりビジネス誘導という意味もあり、JR東日本と協議、検討する」と回答。また、旅行商品の企画販売についても「青森・函館両市を巡るコースを造成するが、北海道から東北へという流れが弱いことから東北、青森を積極樹にPRする」とした。
 鉄路と空路によるインフラ整備の充実により、インバウンド観光振興の飛躍となるよう、県民挙げて千載一遇の好機を活かしたい。

来年3月26日の開業を待つ北海道新幹線車両(函館商工会議所提供)

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