特 集


2015年新春座談会
テーマ「北海道新幹線開業効果を活かす」

新時代の到来! 目指せ「津軽海峡圏」形成を


(左から)

コーディネーター:佐藤淑子青森県観光連盟専務理事
三村申吾青森県知事、鹿内博青森市長、若井敬一郎青森商工会議所会頭


 2015年がスタートした。いよいよ、北海道新幹線開業が来年度末(2016年3月予定)に迫り、新たな広域圏の構築に向けて産業・経済、文化などあらゆる分野で、新幹線開業を見据えたさまざまな取り組みの動きが一段と加速しそう。とりわけ、北海道新幹線開業を八戸、新青森に次ぐ“第三の開業”と位置づける本県にとって、高速交通基盤を活かした、さらなる交流人口の拡大と消費拡大による地域経済活性化への期待は大きい。恒例の新春座談会では、「北海道新幹線開業効果を活かす」をテーマに、三村申吾青森県知事、鹿内博青森市長、若井敬一郎青森商工会議所会頭の3氏に大いに語ってもらった。コーディネーターは佐藤淑子青森県観光連盟専務理事が務めた。

〔佐藤〕明けましておめでとうございます。昨年は全日空(伊丹・札幌線)定期便の復活就航、大型客船の青森港への寄港ラッシュなど人の往来を誘発する条件が整い、観光面を大いに刺激しました。来年度はこれに新幹線開業が加わり、本県を観光で元気にする大きなチャンスが到来します。新幹線開業への期待感について率直な感想から。

時短効果でビジネスチャンス

〔三村〕いよいよ、ですね。昨年11月にレール締結式が行われ、北海道から九州まで新幹線のレールが一本でつながった。“大鉄道ネットワーク”が完成したことになり感無量です。開業すれば新青森−新函館北斗間は最速57分、開業2年後はさらにスピードが加速され最速39分で結ばれます。大幅な時間短縮は観光、ビジネス、医療、教育などさまざまな分野に波及する効果が見込まれ、このビッグチャンスをどう生かすか、が課題。“一衣帯水”という言葉がありますが、道南と本県は一つの圏域だという思いが新幹線開業により一層強まり、「津軽海峡圏域」として大きく飛躍する可能性が出てきた。特に観光面では、鉄道だけではなく空路、海路を組み合わせた観光ルートを構築し、人を呼び込む仕組みづくりが急務です。

道南地域との一体感強まる

〔鹿内〕青森と函館間の所要時間は連絡船で4時間、青函トンネルが出来て2時間の時代を経て、新幹線開通により約1時間となる。隔世の感がありますね。青森、函館両市は青函トンネル開通を記念して“青函ツインシティ”を締結し、昨年25周年を迎えました。ツインシティの交流は北海道新幹線の開業をきっかけにさらに太く伸ばしていきたい。祭り、スポーツ、文化面での交流事業を通して道南地域との一体感を深める考えです。そして、札幌圏と仙台圏の中間にもう一つの核となる人口約180万人(本県130万人、函館など50万人)の“青函圏”を形成することを目指したい。ツインシティ関連では、青森商業高校の生徒たちが考案して菓子メーカーと共同開発した菓子が注目を浴びました。若い力が新商品を生む原動力になっていて、頼もしい限り。こうした動きを行政としてバックアップしていきたい。

〔若井〕古い文献によると、本県と函館は約1万年前から、“しょっぱい川”を互いに渡って交流してきたという記録が残っています。青函圏の文化基盤が縄文時代から既にあったという証左です。本県は今、北海道・北東北4道県の縄文遺跡群の世界遺産登録を目指して精力的に活動しています。青森と函館のつながりは深く、北海道新幹線の開業は両地域の活性化の起爆剤となることを大いに期待しています。経済界としても青函両域の産業・観光振興につながる取り組みを進めていきたいですね。

〔佐藤〕期待感の大きさがひしひしと伝わってきました。では一歩踏み込んで、開業効果を取り込むための具体的な方策についてご意見を。

〔鹿内〕青森市には津軽民謡、津軽三味線、津軽弁など素晴らしい地域資源がたくさんある。昨年2月から毎月ワ・ラッセで公演している「津軽笑っせ劇場」など、これら地域資源を全面に押し出した企画展・催しを積極的に展開したい。更に今、「北のまほろば歴史館」、旧野沢小学校での「縄文の学び舎・小牧野館」と「小牧野の森・どんぐりの家」を今夏までに整備する計画も進めています。「版画の街」あおもりをもっとアピールするために、棟方志功記念館の協力を得ながら、「棟方志功展」開催のほか青森市出身の写真家・沢田教一や寺山修二生誕80年記念展なども企画しています。1月東京ドームで開催される「ふるさと祭り東京2015」では今年もあおもりねぶたが出陣、青森をPRします。冬季イベントを充実させ、1年を通して青森を楽しんでもらえる仕掛けをあらゆる場面で用意します。

成功させよう青森県・函館DC

マギュロウ〔三村〕北海道新幹線の開業で人の往来が活発化し交流人口が増大すると、青函圏の新たな発展につながります。そこで出てくるのが「津軽海峡交流圏」構想です。この構想を最初に言い出したのは榎本武揚と言われています。榎本は先見性があり、早い時代から国際海峡としての津軽海峡の役割を見抜き、その可能性を見い出していました。今、県は、「λ(ラムダ)プロジェクト」を進めています。プロジェクト名は、新函館北斗駅から新青森駅を通って八戸駅への新幹線ルートと、新青森駅から弘前駅への奥羽本線のルートの形が、ギリシャ文字のλ(ラムダ)に見立てられることに由来していて、それぞれの地域で持っているさまざまな資源を結びつけることで、津軽海峡圏域を元気にしていこうという戦略です。そのシンボルキャラクターが「マギュロウ」です。北海道新幹線開業後最初の夏には本県と道南地域をエリアとした「デスティネーションキャンペーン(DC)」(16年7〜9月)が開催されます。前回の「青森DC」(11年4〜7月)は、直前に襲った東日本大震災にもかかわらず各地での積極的取り組みが効果を挙げましたが、今回は多くの観光客流入が見込まれる時期での開催であり、開業効果の広がりが一層期待されます。本県と道南地域を一つの旅行エリアとして認知してもらえるよう、新たな観光コンテンツを提供したい。今夏には、全国の旅行業者に集まってもらい観光コンテンツを売り込む「全国宣伝販売促進会議」を実施します。また、フェリーや空路との組み合わせにより、函館を訪れる中国・台湾など海外のお客さまを青森に呼び込みたい。本州と北海道の端に位置する本県と函館が新幹線で結ばれることで地理的なマイナス面を解消し、一つの圏域として生まれ変わる意義は大きい。観光の成果を最大限に享受するためにも全力で各プロジェクトを進めます。

青函コラボ商品が誕生

〔若井〕当所は函館商工会議所とビジネス分野での連携を目指して、昨年から「会員事業所パートナーシップ構築懇談会」を開催しています。回を重ねるごとに成果が生まれつつあり、実際に青森、函館会員社のマッチングによる「青函コラボ商品」も誕生しています。先ほど、鹿内市長からも紹介がありましたが、青森産カシスと北海道産チーズをコラボした和菓子「ヒトナツノコイ」は、青森商業高校の生徒たちのアイデアが実ったもので、こうした活動の中から生まれました。青函で共通ブランドを作ろうという動きが盛んになり、事業創出につながることが期待されます。もう一つ、当所が集客効果の大きな柱に据えているのが「食」です。東北新幹線新青森駅開業に合わせ事業を始めた古川市場の「のっけ丼」は、観光客が市場内を巡りながら丼飯の上に好みの刺し身や総菜を乗せて楽しんでもらうというアイデアが支持され、今では年間10万杯が売れるヒット商品に成長。約1億円の経済効果が生み出されています。自分で釣ったホタテをその場で味わう「ほたて小屋」事業もそうです。青森駅前の空き店舗を活用して始まり大勢の市民、観光客でにぎわい、ホタテのPRに一役買っています。スポーツコンベンションについても力を入れています。青森市と当所は2018年に韓国・平昌(ピョンチャン)で開催される冬季五輪の事前合宿地として名乗りを上げ、誘致運動を行っています。正式決定ではありませんが、カーリングの韓国チームの選手ら約40人の合宿が有力です。インバウンド(訪日外国人)対策も欠かせない戦略です。

〔佐藤〕新幹線開業までにクリアすべき課題、そして課題克服に向けたさまざまな業界・団体との連携についての取り組みは。

〔若井〕北海道新幹線は、青函トンネルを含む貨物列車との「共用走行区間」での最高時速が特急列車並みの140キロに制限されると聞いています。青函間の距離は約150キロ、その半分に当たる約80キロが青函トンネルです。速度制限は新幹線の最大のメリットである“速さ”を引き出せないことになります。貨物列車への影響等も考慮しながら、時間短縮できるようJR、各団体とも知恵を出し合いたい。開業に合わせて行われる予定のDC開催に向けた気運醸成および連携の強化に努め、「奥津軽いまべつ駅」に1本でも多く停車するためのダイヤ調整など積極的に働き掛けます。「奥津軽いまべつ駅」に関しては、同駅と新青森駅間の交通アクセスの利便性を図ることも急務であり、奥津軽いまべつ駅の利用者を増やすことを念頭に、さまざまなアイデアを出していきたい。


奥津軽いまべつ駅完成予想図(提供:今別町)

「奥津軽いまべつ駅」を活用


奥津軽いまべつ駅工事現場(提供:今別町)

〔三村〕新幹線開業を前に県内各地では、観光客を出迎える準備が進んでいます。県民一人ひとりにお願いしたいのは、八戸駅、七戸十和田駅、新青森駅開業時に培った“おもてなし”の心を再度思い返してほしいということです。改めて、日本全国、海外からのお客さまをもてなすには何が一番大切かを考え、それを実践していくことが大切です。新幹線開業効果を獲得するには「奥津軽いまべつ駅」の活用は欠かせません。新駅誕生を機に県内の優れた地域資源を集め、県外に発信する拠点機能を持った駅舎としての役割を期待したい。駅を発着する二次交通を整備し、津軽地方への周遊ツアーなど観光コンテンツの充実を図ることも急がれます。新幹線開業効果を持続させるための道筋を示す必要があります。観光だけでなく、青函の企業ベースでの連携の動きが活発化しています。地方銀行の仲立ちで金融機関と流通業界が手を組むケースなど、こうした青函圏の新たな商品開発や販路拡大につながる動きを歓迎したい。

観光振興4市でスクラム

〔鹿内〕北海道新幹線開業を見据え、市は平成24年5月に官民一体となった観光振興を目的に「青森市観光振興会議」を組織しました。また、東青地域5市町村で「青森地域広域事務組合」をつくり、地域の課題について広域で取り組む態勢が出来ています。北海道新幹線の対応では、新設される「奥津軽いまべつ駅」の活用を含め、これら広域組織で緊密な連携を図り、開業効果につながる施策を実施します。観光を起爆剤とする施策については、青森市と函館市、弘前市、八戸市の4市は一昨年3月、「青函圏観光都市会議」を立ち上げました。直近では4市の市長が青函圏に大勢の観光客を呼び込もうと、さいたま市はじめ首都圏で観光プロモーションを行ってきました。その際、4市長から、それぞれ個別に開催しているマラソン大会やウォーキング大会の連携、4市を巡る「サイクルツーリズム」(自転車に乗って自然・景観を楽しむ)などを合同実施すれば、大会のすそ野が広がり、海外からもっとお客を呼べるのでは−という話が出ました。前向きに検討してみたいですね。新たな広域観光圏の構築に向けた具体的な動きについては、平成28年に青函圏博覧会を実施する方向で準備を進めています。

〔佐藤〕北海道新幹線開業を活かすためのさまざまなご提言、ご意見を拝聴してきましたが、最後に抱負を含めて、地域活性化に懸ける今年の決意を。

物流ダイナミズムの効果生かせ


本県は海を活用した「成長戦略」を描く

〔三村〕新幹線をはじめ高速交通網の整備は物流の拡大を大きく促進させます。物流を考えると、津軽海峡の存在は大きい。同海峡には現在、北米とアジアを結ぶ貨物航路の約3割が集中しており、その意味で同海峡は物流立地上のポテンシャルが高まっています。こうした海上アプローチの良さと物流拠点機能を生かそうと、県は昨年、「ロジスティクス戦略」を策定しました。今後は、海峡を見据えた成長戦略を描きたい。そしてもう一つ。昨年7月にはヤマト運輸株式会社と「青森県総合輸送プラットホーム」構築に係る連携協定を締結しました。これは、県産農林水産物の国内外への流通拡大を支援するもので、流通業界のネットワークを活用することで本県から翌日午前中に配達出来る国内エリアがこれまでの約8%だったのが中国・四国地方エリアを含む約80%までに拡大します。本県産ウニ、ホタテ、ナマコなどが鮮度・品質を維持したまま全国の消費者に届けられる態勢が整ったわけです。この物流ダイナミズムの効果は絶大で、国内はもとより海外市場への流通拡大が可能となります。例えば東南アジアであれば、沖縄まで運ぶと、次の日には県産農林水産品がアジアの各都市に届く。世界に青森を知ってもらう大きなチャンスを実らせたいですね。今年一年の取り組みということで言えば、昨年に続いて本年も「短命県返上」のための事業を展開します。短命県返上の試みは「健康な青森」を作ると同時に命を守る仕組みを作り上げることにつながります。そして攻めの農林水産業をはじめ産業・雇用面での「青森の成長戦略」を県民の皆さまとともに強力に推し進めていきます。今年は乙未(きのとひつじ)の年。「乙」は草木の芽が外の寒気の影響で曲がってしまいがちだが頑張って生え出そうという意味で、「未」は枝葉の繁栄・繁茂を表すと言います。さまざまな困難、苦労があっても、しっかりと取り組むことによって成果が得られる年にしたいなと思います。

青森の魅力を発信


「東北復興大祭典なかの」に出陣した青森ねぶた

〔鹿内〕今春は新青森駅周辺をチューリップ、スイセン、クロッカスなど花畑で飾る準備をしています。可憐な花々は観光客に青森流のおもてなしの心を伝えてくれるでしょう。青森の観光資源の代表はなんと言っても「ねぶた」です。東京・中野区で平成24年から毎年開催されている「東北復興大祭なかの」にも毎年参加し、今年も大型ねぶたの出陣を予定しています。首都圏の皆さまに青森をPRする絶好の機会であり、市民ボランティアと共に参加して大いに祭りを盛り立てたいと意気込んでいます。東北6県庁所在都市で開催される「東北六魂祭」や、県10市による「あおもり10市大祭典」などイベントには積極的に参加して青森の「観光」「食」を宣伝します。「あおもり10市大祭典」は新年早々の2月8日に「あおもり10市大祭典in東京」を有楽町のよみうりホールで開催し、首都圏から本市の魅力を発信します。2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、開会式セレモニーなどなんらかの形で青森をPR出来る場面をつくりたい。市民の皆さんの知恵をお借りしたいですね。市民主役の「元気都市あおもり」の実現を目指します。そのために必要なのは“青森力”“市民力”そして“地域力”。この三つを推進力にし、「こころ ハネる 青森」をキャッチフレーズに、全力で走り続けます。

民間のアイデアを後押し


DC成功を合言葉に力を結集

〔若井〕会議所会頭の立場で常に念頭に置いているのは、ひとえに会員事業所の発展です。商工業者が元気になるために何をすればいいのか。最近、鰺ヶ沢町の水産卸業の会社が約5年の年月をかけて開発したヒラメの「からすみ」が評判を呼んでいるという話を聞きました。大半が廃棄されてきたヒラメの卵を有効活用しようという思いつきが素晴らしい。逸品はそのままでもおいしいですが、大根と一緒に食べると格別の風味が増します。また、鮫にこだわった商品をつくっている会社があり、そこで製品化したアブラツノザメのかば焼きが水産庁のプロジェクトである「ファストフィッシュ」の認定商品に選ばれ、昨年築地で開催されたコンテストで準優勝を獲得しました。「ファストフィッシュ」とは手軽で気軽に食べることが出来、今後普及の可能性を有し、水産物の消費拡大に資する商品に与えられる商号です。民間業者には、一次産業で生みだした農水産物を加工して付加価値の高い商品を生み出すという知恵があるんですね。こうした民間の発想、アイデアが形となるよう後押しをするのも商工会議所の責務です。商工会議所の役割は一口で言うと、「地域の再生」へ貢献することだと思います。人口減少時代をにらみ、中心商店街、中心市街地をどう活性化するのか。経済界全体で知恵を出す必要があります。人口減少は時代の流れとしても、交流人口拡大による地域活性化策は待ったなしの要請です。北海道新幹線開業を大きなチャンスととらえ、魅力ある青森の「食」「自然」「文化」を発信し、元気で活力ある青森を盛り立てたい。DC開催の準備をはじめ、皆で力を合わせ実り多い一年にしたいですね。

〔佐藤〕新幹線開業をにらみ、これまで進めてきた施策、これから新たに進めていく課題などについてお話をお聞きし、お三方の北海道新幹線開業に寄せる期待感を強く感じました。青森を訪れる多くの観光客に、県民一人ひとりがそれぞれの立場でおもてなしをし、元気な青森をお届できるよう頑張っていきたいと思います。県観光連盟も“青森県を観光で元気にしていこう”−をスローガンに、観光業界発展のためバックアップしていきます。本日はありがとうございました。

 

【出 席 者】

三村 申吾・青森県知事
鹿内  博・青森市長
若井敬一郎・青森商工会議所会頭
コーディネーター 佐藤 淑子・青森県観光連盟専務理事

(敬称略)


まえへ    トップへ    つぎへ