特 集


青森空港 11年ぶり

全日空の定期便が復活就航

7月から札幌、大阪の2路線

高山教授
7月就航予定の全日空ボンバルディアDHC8—Q400型機

1日大阪便3、札幌便2往復

 全日本空輸(ANA)は2014年7月1日から、青森—大阪(伊丹)と青森—札幌(新千歳)の2路線を新たに就航する。大阪線は1日3往復、札幌線は1日2往復。伊丹・札幌線について採算ベースに乗る一定需要があると判断した。全日空が本県に定期便を運航するのは2003年4月の青森—羽田便の運休以来、11年ぶり。全日空の再参入により、7月以降は、青森—大阪、青森—札幌の両路線は、全日空と日本航空の2社が乗り入れるダブルトラック体制となる。県は全日空に対し、定期便乗り入れの再開を働き掛けてきたことから、今回の全日空の決定を大歓迎。経済界もビジネス、観光面での波及効果に大きな期待を寄せている。青森空港発着の国内線は、日航が東京、大阪、札幌の3路線を、フジドリームエアラインズ(FDA)が名古屋線を運航している。これに全日空2路線が加わり、空の便はさらに充実する。空と併せ陸路もスピードアップが図られる。JR東日本は3月15日のダイヤ改正で、東北新幹線の新青森—東京間の全17往復全てを最高速度320キロの「はやぶさ」で運転する。高速化で新青森—東京間の所要時間は平均で9分短縮される。
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 年の瀬も迫った昨年12月26日。藤村修一全日空上席執行役員マーケティング室長は三村申吾知事を訪ね「統計などから見て、2路線の需要は十分確保できると判断した」と語り、大阪、札幌両路線開設を伝えた。その上で、藤村室長は「国内需要が頭打ち状態で、新たな路線での需要確保の必要性がでてきた」と、就航理由を述べた。東京線復活については「羽田空港の枠が非常にタイト。今すぐ始められる状況にはない」との認識を示した。11年ぶりの復活に三村知事は「県民、県経済界にとってうれしいニュース。利用促進策を戦略的に進めたい」と話した。  全日空は1994年に青森—羽田便を就航、その後も広島、名古屋、仙台と路線を広げたが、航空他社との競争激化などから退場を余儀なくされ、2003年4月までにすべての路線から撤退していた。

「利便性が高まる」と県経済界に歓迎の声

採算ラインは搭乗率60%

奈良副会頭
経済界も歓迎。青森商工会議所玄関前には
「全日空、お帰り」の立て看板が掲げられる

 飛行機は74人乗りプロペラ機のボンバルディアDHC8—Q400機を使用。全日空は就航後、採算ラインとされる搭乗率60%を目指す。藤村室長は「採算性の見込みは十分にある」とし、搭乗率が上がれば機材の大型化も検討する考えを示した。

 2003年以来の本県参入に、県経済界からは「利便性が高まる」「観光客を呼び込む追い風になる」などと、歓迎の声が上がっている。全日空復活表明に対し、三村知事は「大きなクリスマスプレゼントをもらった」と最大賛辞を送り、青森空港振興会議会長・鹿内博青森市長も「東京線が休止されて以来、この日を待っていた。旅客増につながる施策を支援したい」と喜びを隠さない。経済界もこぞって歓迎ムード一色だ。若井敬一郎青森商工会議所会頭は「ビジネス、観光客などかなりの需要が見込め、国内外から人を呼び込む大きなチャンス」と意気込む。会議所玄関前には、「おかえりなさい!!ANA」の立て看板が掲げられた。

インバウンド拡大効果に期待

 青森空港の利便性を商機につなげようという動きが活発化しそう。青森空港はソウル便があり、ソウル経由で海外の主要都市とつながっている。JAL、FDAに加え、今回の全日空大阪便、札幌便就航により、東北地方では仙台に次ぐ空路網を持つ。JTB東北法人営業青森支店の長峰英雄支店長は「利便性のアップは、インバウンドビジネス拡大の好機。特に大阪便の就航はJALとの相乗効果により関西圏域がより近くになり、交流人口拡大につながる」と期待を寄せた。

奈良副会頭
全日空便11年ぶりの就航を前に、
歓迎ムードが高まる青森空港

 全日空と日航の2社競合が利用客増につながってほしいと期待する一方で、「ダブルトラック体制後の旅客需要の予測はつきにくい」と見る向きもある。日航青森支店によると、大阪、札幌両路線の搭乗率(昨年4〜10月)は約70%台で推移しており一定の利用率がある。同支店の福田豊支店長は「利便性、価格面でのメリット享受の可能性が広がり、総需要の喚起につながることを期待したい」と話す。反面、「旅客需要が追い付かない時は減便を余儀なくされる事態も想定される」(観光業界)と言った不安の声も漏れる。

 こうした見方に対し、前出の長峰支店長は「業界の知恵を結集し、魅力的な観光商品を顧客に提供することで搭乗率アップに貢献したい」と語り、あくまでも前向きな姿勢を崩さない。ダブルトラック体制は、便数が増える上に価格競争が起こり、利用客にとってプラスになるというデータもある。若井会頭は「運航するからには撤退の二の舞だけは避けたい。価格やダイヤ設定などユーザーが利用しやすい態勢をつくってほしい」と注文を出した。

JRダイヤ改正、新青森—東京間全て「はやぶさ」に

運航態勢の整備進む

  客足の定着には、安定した運航態勢の整備が課題だ。霧が発生しやすい青森空港では、地上からの電波で航空機を滑走路に誘導する高機能計器着陸装置「カテゴリー(CAT)㈽」を導入している。同装置が、空港周辺の樹木が障害となり、昨年12月より運用できなくなっていたが、樹木の伐採等について民有地所有者との間で合意し、同装置の運用が3月にも再開できる見通しとなった。

 県は観光国際戦略として、台湾チャーター便誘致に力を入れている。2013年は円安に加え、空港着陸料の減免などの優遇措置や各種プロモーションが功を奏し、前年比7便増の計45便となった。1月16日には今年最初のチャーター便が青森空港に到着、乗客約130人が県関係者の出迎えを受け、東北各地を巡るツアーへと出発していった。2014年度は12便のチャーター便運航が決まっている。

 ソウル便、好調な台湾チャーター便に加え、国内線の充実というインフラ整備が整った。あとは、国内、国外観光客をどう呼び込むか。若井会頭は「路線の維持・拡充、観光客の受け入れ環境の整備に向け、会議所として全力を挙げたい」と力を込めた。

 JR東日本は3月15日のダイヤ改正に伴い、新青森から仙台・東京間運転の東北新幹線は全て「はやぶさ」となり、国内最速の時速320キロで運転される。新青森—東京間はこれまでより平均9分スピードアップする。

生かしたい新幹線効果

 新幹線新青森駅開業後間もなく発生した東日本大震災は開業効果に水を差した格好となったが、今回のダイヤ改正による「はやぶさ」運転を契機に今度こそ、新幹線効果につなげたい。開業効果を得るには新幹線をどう活用するかというビジョンづくりが急務。「街づくりや観光などストーリー性を持たせる戦略は欠かせない」と専門家は指摘する。

 新駅周辺のハード面の整備も喫緊の課題。開業後3年経った現在も、新駅周辺にはコンビニエンスストアとレンタカーの営業所などがあるだけで、県都の新玄関口としては寂しい印象を与えている。ホテルやオフィスビル建設も厳しい経済情勢が影響し、進んでいない。在来線駅である青森駅周辺の再開発問題も絡み、思うような青写真は描けていないのが現状だ。

 2015年度末には北海道新幹線開業が迫っている。青森が単なる通過駅とならないよう、市民を巻き込んだ官民一体の取り組みが求められる。空路網と新幹線を生かした地域振興策の結集に向け、今こそ「青森力」が試される。


青森—東京間を最高速度320キロで運転する「はやぶさ」E5系車両


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